ロジックベインの事業内容について
金野 代表理事: まずは御社の事業内容について教えていただけますか。
笹岡 社長: 弊社は、ネットワーク機器の監視・管理を行うソフトウェアを開発・販売しています。ルーターやスイッチ、ファイアウォールなど、インターネットの裏側で動いている機器を、遠隔から監視・制御するのが主な業務です。ハードウェアの仕入れはなく、コストのほとんどが人件費です。創業は1992年で、現在は約40名の社員が在籍しており、売上は約12億円。国内販売に加え、海外展開も進めています。

金野: 社名の「ロジックベイン LogicVein」には、どのような意味が込められているのでしょうか?
笹岡: 「ベイン Vein」は静脈、そして鉱脈という意味もあります。ネットワークの裏側を「ロジック Logic」で見通し、「見えないものを見える化する」という思いを込めて名付けました。情報の流れをロジックで捉え、社会を支える会社でありたいと考えています。
金野: 学生時代はいかがでしたか。起業前にはサラリーマン生活の時代があったとお伺いしています。
笹岡: 中学時代は洋楽が好きで、高校時代はバンドを組んだりもしていました。そこで英語と触れ合い、英語の意味が分からないまま丸暗記して歌っていました。特に印象的なのはTHE BEATLESの ”Please Please Me” (1963年発表)という曲です。高校時代の英語力では「どうぞどうぞ、私に」というふうに訳してましたが、最初の"Please"は副詞、2番目の"Please"は他動詞、最後の"Me"は目的語なので、「どうぞ私を楽しませてください」っていう意味だと、だいぶ後になってわかりました。
金野:そうですか。私もビートルズ世代でしたね。昔の歌は歌詞が英語の勉強にもとても役に立つ、そういう時代だったかなと思います。
起業のきっかけについても教えてください。
笹岡: 「自由と荒波を乗り越える」生き方が好きでしたので、会社勤めでは自分の思いを抑えて生きることが多い、それは自分に合わないのかもしれない、それならばと40代で一念発起して起業しました。自分の信念を貫き、挑戦する人生を選びました。

金野:経営者として大切にされている価値観ということについてはいかがでしょうか。
笹岡: 京セラに勤めていた頃、稲盛和夫さんの経営哲学に触れ薫陶を受けました。また、渋沢栄一氏の「論語と算盤」という書籍がありますが、人としての生き方、そして金銭管理の両立が必要だと教えられました。社員研修では英語版を使うこともあります。
悩みはありますが表に出さず、朝晩は会社・家族・社員に感謝することを習慣にしています。最近は「積善」という言葉を大切にしていて、墓石にも刻みました。善を積むことが、人生に返ってくると信じています。
英語学習が人生を変えた
金野: 日米会話学院との出会いについて、お聞かせください。
笹岡: 学生時代は劣等生で、荒れた生活を送っていました。当時はノンポリと言っておりましたが、「このままで自分の人生後半は立派な人生を送っていけるのだろうか」と追う疑問がありました。そして一番身近に感じていた英語をやってみようと、英語を学ぶことに決めました。当時、日米会話学院は社会的にも評価が高く、ここでなら本気で学べると思い入学しました。1976年のことでした。
金野: 当時は官庁からの委託生も多かったかと思います。また日本語禁止で留学に相当するようなプログラムを提供しておりました。

笹岡社長が通っていたころの日米会話学院の校舎
笹岡: その通りで、夜間クラスの学友は官庁や銀行の特待生が多く、彼らの真剣な姿勢に刺激を受けました。今思いますのは、70歳を過ぎても英語を勉強し続ければ能力は下がらないんだなと思います。
日米会話学院に通っていなければ、ロジックベインを創業することはなかったでしょう。およそ2年の厳しい勉強をしたおかげで、ひと皮むけた人間になれた。学院には大きな恩を感じています。
金野: その経験が、現在の国際的な事業展開にもつながっているのですね。
笹岡: はい。20代で英語を学んだことで、海外出張にも抵抗がなくなりました。
現在はアメリカ、イギリス、オーストラリアに拠点を持ち、従業員の半数は外国籍の社員です。日本でも売れ始めたから海外進出もしてみようという気持ちです。将来的には国内と海外で同じ程度の売り上げを上げるようにしていきたいと思っています。

金野: 社内の言語運用についてはいかがですか?
笹岡: 公用語は定めていません。社員同士の会話は、相手の母語に引っ張られることが多いです。私自身、英語での会議前は2,3日前から英語の本を読んで“英語脳”に切り替える準備をしています。そうでないとやはり丁丁発止でというのは難しいのです。
国際的な事業展開と多文化経営
金野: 現在は外国籍社員の方も多いとのことですね。そういった外国籍社員との価値観の共有や育成については、どのように取り組まれていますか?
笹岡: エンジニアとして技術的な評価は技術責任者に任せています。私は人間性を重視し「この人は信頼できるか」を見極めます。欧米のギリシャ哲学、ローマ哲学などに基づいた倫理観は、儒教的な日本の倫理観とは異なります。しかし、人間としての共通する道徳観はありますので、大切にしています。欧米の社員にはまず褒めてから、課題を共有するようにしています。毎月月末に行う会議では、論語などを用いて、人間の生き方の話をします。どういう風に生きていくのがいいのか。また人間としての軸を外さないで仕事をしてほしいということを話します。

英語で広がる人生の可能性
笹岡: 日米会話学院での学びがなければ、今の自分はありません。真剣に毎日課題に取り組めば、素晴らしい人生がやってくる。それを若い人たちに伝えたいです。英語を通じて、自分自身を鍛えることができました。しっかり努力をする人は時間がかかっても上の方に伸びていくと思います。英語だけでなく日米での学びは、「真剣に目の前の課題に取り組めば素晴らしい人生がやってくる」ということでした。学べば、人生は大きく変わります。英語を通じて、自分自身を鍛え、世界を広げることができました。
金野: 本日は貴重なお話をありがとうございました。学院の教育が卒業生の人生に深く関わっていることを改めて実感いたしました。
