日米会話学院が創立80周年を迎えるにあたり、これまで関係機関、協賛者、教職員、JASC(日米学生会議)参加者、外国人による日本語弁論大会の参加者、そして国際教育振興会が実施する各種プログラムにご参加いただいた皆様、日米会話学院および日本語研修所で学ばれた皆様、在校生の皆様に、心より感謝申し上げます。
国際教育振興会の前身である日米会話学院は1945年11月1日、まさに戦後まもなく設立されました。
当時はGHQと対等に交渉ができる人材の育成を急務としておりました。
日本人は英語を学び、将来は外国人に日本語を教え、対話・会話をすることによって、多様な文化を持つ人々と交流をすることこそが平和な世界を作ることになる、という武藤先生の強い信念によって設立されました。その思いは長く院長を務められた板橋先生に引き継がれました。

はじめは丸の内の内外ビルにおりましたが戦後でしたのでGHQによる接収などもあり、日本橋高等女学校(現 開智日本橋学園中学・高等学校)に、次いで神田の石坪ビルに引っ越しを行いました。
1957年には四谷に校舎を建て、現在は四ツ谷駅周辺再開発に合わせてコモレ四谷に入居しております。長く四谷の地に根差した活動を行っております。

「国際教育振興会」は1947年4月に「国際教育文化協会」という名称で設立され、翌1948年8月、文部大臣から財団法人の認可を受けました。1945年に創設した日米会話学院を法人化すると共に、学院設立時の理想を達成するためには、学校教育事業のほかに各種の社会教育や文化事業を推進する必要があると考えたからです。1953年6月には、国際教育交流、異文化理解事業、語学教育事業を推進できるように法人名を「国際教育振興会」と改称しました。2012年4月以降は、内閣府所管の「一般財団法人国際教育振興会」となり今日に至っています。

1934年に始まった「日米学生会議(JASC)」は、戦中・戦後に中断を余儀なくされましたが、創設者の一人である板橋先生の尽力により、1964年からは当財団が主催者となりました。JASCの参加者は、政財官界や学術界をはじめ、世界各国で活躍されており、若い世代にとって大きな刺激となっています。
「外国人による日本語弁論大会」は1960年に開始され、2025年には第64回大会を迎えます。当初は当財団単独で開催していましたが、現在では国際交流基金および開催地の自治体との共催により、全国各地で実施されています。これまでにおおよそ900人以上の方々にご参加いただき、毎回、参加者の流暢な日本語に驚かされております。

英語教育を行う「日米会話学院」では、これまでに企業官庁プログラム、専修学校制度時代、現在の通学制プログラムを通じて大変に多くの方が英語を学ばれております。1967年に開講された日本語教育を行う「日本語研修所」では、90を超える国と地域から、9,000人以上の方が日本語を学ばれました。新型コロナウイルスの流行を契機に、英語・日本語教育の両方でオンライン授業を積極的に導入し、全国・世界各地からレッスンにご参加いただいております。また、両教育機関では、専任講師が作成・監修したテキストを使用し、時代の流れに合わせた授業を展開しています。
当財団の様々なプログラムを経験された方々が、世界各地で活躍されていることは、私たちの大きな財産です。
国際教育振興会には歴史と伝統があります。その創設理念を大事にすると同時に時代の変化に対応した革新を進めていくことが必要です。語学教育はAIの登場によって大きな変化の波が押し寄せています。若い世代にとってはいつでもどこでも英語を学ぶことができる環境があると言えます。日米会話学院が得意とする集合研修やプライベートレッスンは若い世代にどこまで評価してもらえるか、進化を求める革新が必要と考えます。テクノロジーは私たちの生活様式を大きく変えてきました。この流れは変えることはできません。
ただし、AIの時代にあっても人間が人間であることに変わりはありません。
衣食住は便利になっても基本は変わりません。語学研修にテクノロジーを取り入れると同時に人間としての喜びを感じられることが肝要と思います。人間はひとりでは生きていけません。必ずや他のひととの関わりがあって対人関係は成立します。国際関係も同様です。日米会話学院の「ひと」を中心とした語学研修の意味がここにあると信じております。
人類普遍の人権は、自由と民主主義によって守られます。その価値を継承し、次世代のリーダーを育成することが、当財団の不変の理念です。「国際相互理解の推進」「グローバル人材育成」といった理念を共有する人材が社会で活躍することこそ、当会の理念の実践であると考えます。
「伝統と革新」を大切にしながら、私たちは歩みを進めてまいります。
2045年には、日米会話学院は創立100周年を迎えます。その時代に世の中がどう変化しているかを想像し、変化を恐れずに取り組みを進め、次世代へバトンを渡すことが、80周年を迎えた今、代表理事としての私の使命であると考えております。

一般財団法人国際教育振興会代表理事
金野 洋